斎藤成也先生にお返事させていただいたメールを転送いたします。
(Sent: Tuesday, April 17, 2007 9:19 AM Subject: Re: ご質問 固定確率について)
> お忙しいところをお返事くださいまして、
> まことにありがとうございます。
>
>
>> 以下のふたつの表現:
>>
>> 1)「どの遺伝子も平等に子孫に広がる可能性があって、
>> 全体に占める割合(確率)はみな1/2Nである」
>>
>> 2)「どの遺伝子も平等に、
>> 子孫全体に広がる可能性(確率)が1/2Nずつある」
>>
>> では、意味がまるっきり違うという御意見ですが、
>> 「まるっきり違う」 という表現はちょっと極端だと思います。
>> たしかに指摘されたとおり、後者の場合、集団が存続することを
>> 前提としています。
>> これは、集団の大きさNが一定だと仮定する、
>> ということを受け入れると、そうなってしまいます。
>> ここでは集団そのものが絶滅することは考えていません。
>> なぜなら、今存在している集団のなかの遺伝子を考えているから
>> です。
>
>
> 指摘させていただいたのは、「1/2Nの意味」です。
> (集団の存続は異論ありません。)
>
> 1/2Nの意味について、
>
> 1)では、突然変異した遺伝子の濃度がずっと1/2Nという意味であり、
>
> 2)では、2N個の遺伝子のどれかが必ず全体を占めるようになるから、
> 突然変異した遺伝子が全体に占めるようになる割合は1を2Nで割って
> 1/2Nという意味ですが、
>
> 「どれかが必ず全体を占めるようになる」かどうかはわからないでしょう、
> という指摘です。
>
>
>> 「遺伝子とゲノムの進化」29頁の、合祖過程の説明図を見ていただくと、
>> それが明確におわかりになるかと思います。
>> 同様に、表現(1)でも、今後もこの集団が絶滅しないという、
>> 暗黙の前提があります。
>> あくまでも、そのように存続を続ける集団のなかでの、各遺伝子の間
>> の相対的な固定確率のことを論じているわけです。
>
>
> 合祖過程の説明は「どれかが必ず全体を占めるようになる」場合の説明
> に過ぎないと思います。
> 最初から、検討しているのが、同じ先祖を持つ場合のことだからです。
> 2個の場合も合祖することが前提となっており、n個の場合もそうです。
> 合祖することを前提として、何代前に合祖するかを考えています。
>
> ですから、これは合祖するものに対する検討に過ぎず、
> 合祖しないものは検討に含まれていません。
> すなわち、最初から合祖するという前提に立ってしまっての話です。
>
> p34の図6を見ますと、これもあたかも共通祖先遺伝子が全体に広がる
> 有様を示しているように見えますが、
> この図では、共通祖先遺伝子が子供に受け継がれる確率が極端に大きく
> 書かれています。
> 実際は、中立なのですから、他の白色遺伝子も黒と同様に遺伝するので、
> 黒色の遺伝子は、10世代になっても1世代と同様、1個のはずです。
> この図は対立遺伝子についての説明だからなのでしょうが、
> とても誤解が生じやすいと思います。
>
>
> 第1章では、進化、すなわち、突然変異遺伝子がどのようにして全体に
> 広がっていったのか、を中立説で説明しようとしているわけですから、
> 最初から全体に広がることを前提としてしまっては説明にならないのでは、
> というのが私の意見なのです。
>
>