2%程度の質量をもたらすビックス機構
素粒子の質量はビックス機構によってもたらされると言われています。
WボソンとZボソンが陽子の約100倍もの質量を持つことは大きな謎でした。多くの科学者が悩んだ末、ついにワインバーグやサラムら理論家たちは「(ゲージ対称性が自発的に破れてその結果)ヒッグス場があるはずだ」と結論しました。
WボソンとZボソンはヒッグス場の抵抗を受けて動きが鈍り質量があるように振舞うと見なされます。
このヒッグス機構による質量は物質の質量のほんの2%程度であるという話ですね。
98%の質量をもたらす「カイラル対称性が自発的に破れた」とは?
カイラル対称性とは、質量ゼロの素粒子がもつ対称性で右巻き粒子と左巻き粒子を区別する対称性のことをカイラル対称性といいます。
それらの間にも強い引力が働いて、粒子と反粒子が右巻きと左巻きのペアで互いにくっついて真空中に「埋まってしまった」状態になっています。この真空中を走る粒子は常に埋まった粒子反粒子対にぶつかりながら進むので光速よりも遅くなり、別の言い方をすると質量を獲得する。このことを「カイラル対称性が自発的に破れた」と言います。
クォークは陽子や中性子の中でこうやって質量を獲得して、私たちの質量の98%を作っているわけです。
さらに、有限温度・有限密度の論文によると
http://www.coe.phys.nagoya-u.ac.jp/conference/young/download/mitsudo_01c.pdf
カイラル対称性とは、質量ゼロのディラックフェルミオンの持つ対称性である。実際のクォーク質量は上述のようにゼロでない値を持つが、 クォークに限定すると、これらの質量はの特徴的なスケールに比べて小さいので良い近似でカイラル対称性をもつ。
この対称性は、しかし、強磁性体の場合と類似して、自発的に破れており、その結果南部ゴールドストーンの定理により、中間子が南部ゴールドストーン粒子に同定される。
カイラル対称性の秩序変数はカイラル凝縮と呼ばれるクォーク・反クォーク対の真空期待値であり、これは超伝導におけるクーパー対に対応している。
このカイラル凝縮が中性子を構成するクォークのまわりに「雲」のようにまとわりつくことで、クォークが大きな質量を獲得し、観測される中性子の質量を生み出すというのが、質量の起源の一つの理解である。
とあります。
この雲のようにまとわりつくという表現は水あめのような仕組みということと同じ意味なのでしょう。
どちらにしても質量が生じるのは相対的関係の授受作用の力がベースにありますね。
ラベル:質量の起源